高知県視覚障害者の就労を促進する会
ニューステキスト版 No10

2008年10月5日発行 
【事務局長】 片岡慈仲 高知市上町4−10−3(電話088−875−6452
)【編集担当】 吉岡邦廣 高知市枡形9−11                 
   URL   http://k-sokushin.net/   
         
1.第14回街頭署名活動へのご参加を
 10月19日(日)14時30分から15時30分にかけて、ひろめ市場にて第1
4回街頭署名活動を行います。ニュース10号も配布します。ぜひご協力をお願いい
たします。

2.県点字試験実現記念講演会(報告 中平 晃)
 今年度から高知県の公務員採用試験(身体障害者を対象とした採用選考試験)を点字
で受験可能になったのを記念して、9月23日(祝)、県民文化ホールで記念講演会を
行いました。講師は田中章治氏。参加者は80名でした。
 講演で特に記憶に残ったのは、視覚障害者の就労の遅れ、課題とその解決策で、視
覚障害者の雇用を断る理由としてよくいわれる「仕事がない」という考え方の克服と
して、「仕事を障害者に合わせる」のではなく、「障害者に仕事を合わせる」と言う
考え方が大切。例として、3人の仕事の中から障害者にできる仕事を抜き出すと、障
害者1人分の仕事になり雇用が生まれる。という話です。
あと、点字試験の実施方法についてでは、募集要項の「活字による試験問題に対応で
きる者」と言う項目の削除。一般就労にはパソコンが使えることが必須。という話で
す。
講演後は活動報告、特別総会、閉会という流れです。 
特別総会は、会員規約、今後の活動方針についてフロア発言を交えて行い、今後の活
動方針としては、県の中・上級公務員採用試験での点字試験の実現、高知市の公務員
採用試験での点字試験と年齢規制の緩和の実現、県や市の公務員採用試験で音声パソ
コンによる試験の実現。本会のニュースをカセットテープでも発行した方がいいとい
う提案。視覚障害者のパソコンでの就労訓練を復活する。等が出されました。
 記念講演会を終えて改めて視覚障害者の雇用促進のための課題を再認識しました。
 最後になりますが、高知県職員労働組合「ふれあい基金」助成をはじめ、多くの方
々のご協力、ご支援があってこその今日を迎えることができました。本当にありがと
うございました。
今後ともご協力、ご支援をよろしくお願いします。

3.第13回街頭署名活動を行いました。
 9月13日ひろめ市場で、13回目となる街頭宣伝署名行動を行ないました。8名
の参加で75筆集めることができました。また、この日は同時に、9月23日の県点
字試験実現記念講演会のビラ宣伝も行ないました。


4.全視協全国委員会で活動報告
 9月6日、7日に東京都で開かれた全日本視覚障害者協議会全国委員会で、結成か
ら県の点字試験実施決定までの活動報告をしてきました。全視協の皆さんからは要請
ハガキ活動、署名活動等への多大な協力をいただいており、お礼を述べるよい機会と
もなりました。また、入会も呼びかけさせてもらったところ、その場で10名近い方
が会員になって下さいました。続く8日に行われた厚労省との雇用に関しての交渉に
も参加し、職場介助者助成制度の周知と助成期間延長といった全国での課題も勉強し
てきました。

5.市議会報告
 現在までに高知市議会定例会で、点字試験に関して高木妙公明党議員、細木良共産
党議員が質問して下さっています。そこでやり取りされた概要を報告します。
 6月市議会(6月23日)では高木妙議員が質問に立ってくださいました。「自立
支援法や特別支援教育法の実施により、障害があっても社会参加したい想いは強まっ
てきている。日本は国連の障害者権利条約に署名もしており、ノーマライゼーション
の見地からも、そうした想いを支えることが必要なのではないか」という旨の発言を
され、点字試験実施における課題と取り組みを質問されました。この質問に対し、吉
岡副市長等からそれぞれ、「点字試験を実施するための技術と準備期間が無い、能力
を活かせる職場が見出せていない」、「国からの情報提供を求める」といった返答が
なされました。重ねて高木議員は、「実施を決定した上で課題に望んでいただきたい
」と市長のお考えも質問して下さり、市長からは「実施する方向で課題に臨んでいる
と聞いている。県と連携しながら進めていきたい」との返答が聞かれました。
 9月市議会(9月19日)では県が先行して点字試験を実施するのを受けて、細木
議員が「来年度実施に向けてどのような計画をしているのか、業務内容の検討はどう
なっているのか」と質問して下さいました。総務部長からの返答は「来年度実施に向
けてのめどは立っていない。業務も見出せていない」といったものでしたが、「来年
度実施というゴールを決めて、早急に計画を進めてほしい」と再度要望して下さいま
した。

6.県職員採用試験案内が配布されました
 平成20年度の身体障害者を対象とした高知県職員採用試験の案内が配布されまし
た(受付は終了)。今年度から34歳まで受験年齢が引き上げられ、一般事務区分で
は点字による試験が可能になりました。詳細については高知県人事委員会の以下のホ
ームページをご参照ください。
http://www.pref.kochi.jp/~jinjiiin/keikaku.htm

7.働く視覚障害者インタビューH (聞き手 吉岡邦廣)
 今回は日本福祉大学を卒業後、東京都福祉保健局ナーシングホームでお勤めの高山
良太さんに電話取材させてもらいました。在学中に社会福祉士の資格を取得した高山
さんは、東京都の福祉士採用試験に合格し、2002年度からお勤めになられていま
す。高山さんは全盲の方ですが、片道1時間をかけて毎日通勤されています。
問:採用試験はライバルが多かったのではないですか。
答:福祉士の採用試験は点字試験だけで、視覚障害者が対象の試験です。また、受験
には福祉関係の資格が必要なので、受験人数は限られていました。
問:どのようなお仕事をされていますか。
答:僕が働いている所は特養の老人ホームなのですが、ここで入所されている方の生
活相談をしています。あと、都民の方からの介護保健についての質問に電話や窓口で
応じています。
問:お仕事で困られていることはありませんか。
答:手書きの書類が困ります。できるだけパソコンのデータで渡してもらえるように
お願いしています。
問:職場でサポートしてくださる人はいないのですか。
答:毎週火曜日に3時間のヒューマンアシスタントをつけてもらっています。この時
に書類を読んでもらっています。
後はリーディングサービス(対面朗読)も利用しているのですが、仕事柄個人情報が
多いので、とても気を使っています。書類はコピーして、個人情報に触れる部分を塗
りつぶしてもらった上で、対面朗読してもらう等の工夫をしています。
問:電話相談や窓口相談の仕事はご苦労が多いのではありませんか。
答:電話相談は相談後に相談記録をつけるのですが、ブレイルメモ(点字電子手帳)
でメモを取ることができるので、それほどではありません。ですが、窓口相談では入
所申請書等の書類も扱うので、他の職員に確認してもらったり、なるべく提出しても
らった書類を使って説明するなどの工夫をしています。あと、何も話さずに待ってい
らっしゃる方もいるので、窓口当番は気を使います。無人の窓口に話しかけてしまっ
たりすることもあります。
問:どうもありがとうございました。

8.大阪市、パソコン受験が可能に
 大阪府に続き大阪市でも、身体障害者を対象とした職員採用試験において、今年度
から音声パソコンが併用できるようになりました。一般事務、福祉職での受験が可能
で、音声パソコンでの問題文の読み取り、回答作成ができます。詳しくは以下の大阪
市のアドレスをご覧下さい。
http://www.city.osaka.jp/kansajinji/saiyou/

9.スクラップブックより
 障害者に仕事合わせる発想を
    点字試験で公務員第1号 田中さん(埼玉)高知市で講演
    ―― 9月26日付高知新聞「地域」より
 全国で初めて地方公務員に一般就労した重度視覚障害者で、全国視覚障害者雇用
促進連絡会会長を務める田中章治さん(63)=埼玉県川口市=の講演会がこのほど
、高知市本町4丁目の県民文化ホールで開かれ、視覚障害者の就労の歩みや課題につ
いて語った。「県視覚障害者の就労を促進する会」の主催。  (浜田佳奈)

 先天性弱視だった田中さんは、20代になると完全に失明。大学卒業時、友人が
次々と公務員に就職する中、視覚障害者は公務員になれないことに疑問を持った。「
なぜ自分にはその機会がないのか」と東京都に掛け合ったが、「点字試験は前例がな
い」「内規で0.6以上の視力が定められている」「勤めてもらう職種がない」と門
前払いされた。
 2年後の昭和49年、自らも加わった視覚障害者団体の運動が実り、東京都が全
国で初めて福祉職の採用に点字試験を導入した。
 田中さんは当時、28歳。北海道函館市の障害者支援施設でマッサージなどを教
えていたが、1ヵ月間の猛勉強を経て合格。もう1人とともに、重度視覚障害者の採
用第1号となった。
 面接官に「視覚障害者の読書問題を解決したい」と熱意を話した田中さんは、希
望通り都立中央図書館に配属された。以来30年以上にわたり、対面朗読の予約受け
付けや録音図書、点字図書の品質チェックなど、視覚障害者への図書館サービスに携
わっている。
 「前例がないから緊張感はあったが、人に明るく接し、自分から積極的に話をす
ることを心掛けた。受け身だけではなかなか理解も進まないから。『これを助けてく
ださい』『こういうことをしたらいいんじゃないか』と自分からどんどん声を上げま
した」
 田中さんによると、全国で約31万人いる視覚障害者のうち就業しているのは2
1.4%。ハローワークでの職業紹介はマッサージ、はり・きゅう業が約半数。企業
での事務職なども増えてはいるが、民間企業での障害者の法定雇用率1.8%は1度
も達成されていない。
 現在、視覚障害者の就労業種はソーシャルワーカー、へルスキーパー、企業の研
修担当やクレーム対応、IT関係などさまざま。活字が読めないから仕事ができない、
通勤ができない、といった偏見をいさめ、「門戸さえ開かれればいろんな可能性があ
る」と力説。
 「視覚障害者にはできる仕事がない」という受け入れ側の意識の壁には、「今あ
る仕事に障害者を無理やり当てはめるのは難しい。障害者に仕事を合わせていくとい
う発想を」と呼び掛けた。
 「大事なのは、視覚障害者も働く権利があるということ。そこを行政も社会も分
かってほしい」
 高知県では「―― 就労を促進する会」の請願運動の結果、身体障害者対象の県
職員採用試験に点字試験が導入され、11月30日に初めての試験が行われる。田中
さんは「自分にできることをアピールする力も大切」と、後輩たちにエールを送った


 写真説明:「いろんなことができる、戦力になるんだと訴えて」。盲導犬を連れ
て講演した田中さん(高知市の県民文化ホール) 
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※ その他、9月17日付高知新聞社会3面、24日付朝日新聞高知面、毎日新聞23面、
10月5日付高知民報にも掲載されました。



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