就労を促進する会ニュース
【事務局長】 片岡慈仲 高知市上町4−10−3(電話088−875−6452)
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2010年3月6日発行
No.15
1 ロービジョンケア講演会を開きました
昨年助成して頂いた「雇用と就労・自立支援カンパ」を基に、日本ロービジョン学会理事長田淵昭雄先生をお招きして、高知県視力障害者の生活と権利を守る会との共催で、1月10日高知市保健福祉センターでロービジョンケアに関する講演会を開きました。ロービジョンケアの診療報酬化と身体障害者手帳認定基準の改善をテーマに、約60人が聴講しました。
視覚障害者の約9割を占める弱視者にとって、就労を継続してゆく上で、残存視力を活かすためのリハビリは欠かせません。しかしロービジョンケアを受けられる施設数はまだまだ少なく、そうした状況の改善のために現在、診療報酬化が視覚障害者団体等から求められています。
ロービジョンケアを受けられず、自立した生活を営めないために発生する介護保険料等の社会的な費用があります。そうした費用と診療報酬化の予算を比較しての、経済的側面からのロービジョンケアの社会的な意義についてのお話が印象的でした。
また、併せて障害者手帳の等級認定基準の見直しについてもお話していただきました。1から6まで区分けされている等級は、視力・視野の数値を基に計算されます。しかし、数値的に同じ視野角度の欠損であっても、部位により生活の困難さが異なってきます。例えば頭上より足元が見えづらくなった方が、歩行に対する影響は大きくなります。そのため、もっと生活の困難さを計ることのできる認定基準に改善しなければいけないというお話でした。
活発な質疑応答もあり、全国的なロービジョンケアの現状、問題点を学ぶよい機会となりました。
2 視覚障害者雇用のためのセミナーが開かれました
2月15日、障害者就労支援チームと高知県立盲学校の主催で、経営者に向けての視覚障害者雇用セミナーが開かれました。視覚障害を理解してもらうための講演、盲学校の授業見学が行われ、IT関連企業、大学法人、病院等から8団体の参加がありました。本会も参加し、音声パソコンデモを担当しました。三療とともに事務職での一般就労に目を向けてもらうよい機会となりました。今後も継続的な開催を望みます。
3 視覚障害者のための職業訓練の実施に向け、就労支援チームと話し合いました
昨年12月25日に県庁障害者就労支援チームと視覚障害者向け職業訓練実施のための話し合いを行いました。ニーズ把握のためのアンケート調査の実施方法、内容の検討が主な議題でしたが、県庁側は「少しでも希望者がいれば実験的に実施したいと思っている」とたいへん積極的でした。
本会からは「求職者だけでなく、現在就職している視覚障害者のための訓練も必要」「指導員の養成にも力を入れてほしい」等の意見が出ました。就労者のための訓練は、雇用の継続といういっそう緊急度の高い問題に直面している分、求職者以上に切実な問題といえるかもしれません。職業訓練実施の際には、迅速な対応をお願いしたいと思います。
4 来年度、雇用促進法が変わります A (報告 吉岡 邦廣)
来年度から雇用促進法(障害者の雇用の促進等に関する法律)が大きく改正されます。改正のポイントは雇用納付金義務づけ事業所の拡大、除外率の一律削減、短時間労働者の雇用率算定への組み込みの
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点です。今回は除外率削減、短時間労働者の雇用率適応について報告します。
雇用促進法では原則
1.8
パーセントの障害者雇用率が定められていますが、専門性、危険度の高い職種は雇用が困難であるとの理由で職種別に雇用率の除外率が設けられてきました。しかし、支援技術の革新や障害の有無に関わらず雇用されなければいけないというノーマライゼーションの観点から、廃止に向けて現在は段階的に引き下げられている途中です。2010年7月にはさらに、各職種一律に10パーセント引き下げられます。今回の引き下げで電気業や郵便局では0となる予定です。
また、雇用促進法では週30時間以上の労働者を1人として雇用率を算定しています。一部の障害種ではすでに認められてきましたが、今年7月の改正からは、20時間以上30時間未満の労働者を0.5人として数えることができるようになります。なお、障害者手帳1、2級の重度障害者は、2倍の人数として数えます。
今回の法律改正は、授産施設等での福祉的就労から、特に中小企業での一般就労への移行を意図したもので、高知県でも障害者雇用が大きく改善することが期待されます。しかし障害種別ごとに見ると、視覚障害は非常に雇用状況の厳しい障害種です。期待と同時に、改正を雇用促進につなげられないのではないかという危惧もあります。他障害との雇用格差が拡大しただけに終わらぬよう、今改正を積極的に活かしましょう。
5 働く視覚障害者インタビュー K (聞き手 藤原 義朗)
中村さん パソコン力以外にスキル必要
今回は、福岡県北九州市の民間企業で働く中村忠能(ただやす)さんにインタビューをしてきました。
中村さんは(有)化成フロンティアサービスという三菱化学の特例子会社に勤める32歳の青年です。佐賀盲学校出身のほぼ全盲の方です。筑波身障技術短大情報処理科を卒業し就職されました。
中村
特例子会社は、そこの障害者雇用率が親会社全体の雇用率計算になるわけです。三菱化学全体としては雇用率達成しているということです。会社は、ペットボトルや車の部品など化成製造の会社です。
藤原
仕事内容は?
中村
会社のホームページを見える人と組んで作ったり、社員の点字名刺作りや、その他、点字プリンターを使用して会社案内などもしています。
藤原
ホームページ作成で、視覚障害者としてのメリットは?
中村
最近のホームページ作成は、以前より簡素化されて視覚障害者に作りやすくなりました。また、視覚障害者がアクセスしやすいよう当事者の観点から配慮して作成しています。使用ソフトは、WZエディターという読み分けできるもの、ジョーズ、PCトーカーです。見える人と一緒に仕事をしていると、ソフトの関係でたまに困ることがありますね。ですけど、見える人に見てもらいながらという方法はありますね。
藤原
厚生労働省制度の設備設置助成金事業は利用しましたか?
中村
初年度は、ソフトを買ってもらいました。その後のバージョンアップへの対応を切り出せるかどうかは企業への貢献度によるものですかね。
中村
筑波技術短大では、雇用制度や技術以外のノウハウについても教育上必要だと思いました。また、先天盲の人にも漢字教育が必要です。日商のワープロ検定など設けて技術アップも必要でしょう。それと、ストレスを溜めないことでしょう。目にきますからね。テープ起こし、デジタルデータは足でのアシストではなく、「おこしやす」といって裏キー操作でできるものを使用しています。
今回、中村さんにインタビューさせていただいて、個人の努力と企業のコーディネートの大切さを感じた取材でした。
6 アンケートにご協力を
企業で就労するための視覚障害者向けパソコン訓練のニーズを調査するアンケートを、県庁障害者就労支援チームが行っています。以下のURLからアンケート内容をご覧になれます。ご協力をどうぞよろしくお願いします。
URL
http://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/060301/h21-syougai-syurou.html
7 スクラップブックより
(平成22年1月11日付朝日新聞高知朝刊より抜粋)