高知県視覚障害者の就労を促進する会
ニューステキスト版 No18
2011年1月8日発行
URL http://k-sokushin.net/
【事務局長】 片岡慈仲 高知市上町4−10−3(電話088−875−6452)
【編集担当】 吉岡邦廣 高知市枡形9−11
1 合格しました(報告 吉岡 邦廣)
11月19日、身体障害者を対象にした平成22年度県職員採用試験の合格者が本
庁で発表されました。22人中3人採用とやはり狭き門でしたが、3度目の挑戦でや
っと合格することができました。
今回は新たに点訳していただいた問題集を使っての学習に専念しました。点訳、音
訳された問題集の数はまだまだ限られています。そのような中、一般図書の点訳以上
に技術が要求される試験問題の点訳にあたってくださった点字図書館のボランティア
さんには本当に感謝しています。
早く仕事を覚え、視覚に障害があっても働けることを証明しなければいけないとい
う責任も感じていますが、今は働ける喜びでいっぱいです。応援、ご支援頂いた皆さ
ん、どうもありがとうございました。
さらに喜ばしいことに今年度は、高知市でも点字受験による合格者が生まれたよう
です。門戸を開くことから始まった公務員試験運動ですが、県、市ともに合格者が出
たことで高知の視覚障害者雇用にはまた新たな道が開けました。一人でも多くの人に
後に続いてもらい、この道が大きな道となることを望みます。
今後は就労環境の整備において皆様のお知恵、お力をお借りすることになろうかと
思いますが、引き続き変わらぬご協力のほどをよろしくお願い致します。
2 パソコン職業訓練報告(報告 吉岡 邦廣)
11月1日から12月28日にかけてサポートぴあにて開かれた第1回パソコン職
業訓練が修了しました。受講しての感想を報告します。
訓練内容は受講生のニーズに合わせて組まれているようでしたが、私は主にWord、
Excelでのビジネス文書作成、データベース操作の基礎、PowerPointでの資料作り、
テープ起こしを学びました。今まで我流でやってきたテープ起こしですが、専用ソフ
トの使い方、約束事、効率のいい手順を学ぶことができ、目からうろこが落ちました
。また、自動的に文字サイズやレイアウトが変わるなどしてデザインが把握しづらい
PowerPointの扱い方を学べたことも有意義でした。願わくば、3ヶ月ぐらいの期間が
ほしいところでした。
3 図書館見学記 前編(報告 正岡 光雄)
著作権改正、合築問題で高知の公共図書館のあり方が大きく問われている今、正岡
事務局員が県外の公共図書館、点字図書館の障害者サービスを調査してきました。視
覚障害者が当事者としての知識を発揮できる職域としての側面、就労に必要な専門知
識、情報を得る場としての側面の2面から公共図書館は就労問題と切り離せない施設
と言えます。今回は職域としての面を中心に前編を掲載します。
「図書館」への新しい波
〜著作権法改正で「図書館」が生まれ変わる?〜
視覚障害者の新たな雇用も
高知の4図書館の合築方針に対し、内外からの「待った」の声が上がり、先行き
不安が広がっている。そんな最中である。私は「点字図書館」検討委員及び、本体「
合築検討委員会」への意見陳述者として、他県の図書館を見学した。以下愛媛、広島
、大阪及び京都の4府県11館を見ての感想である。
先ず、2010年の「著作権法改正」によって図書館における「障害者サービス」
は拡大の方向に進みつつある印象を強くした。
これまでは、著作権法37条で、複製が認められていたのは、点字図書館等におけ
る視覚障害者に対する点字や録音物に限定されていた。「改正」によって、公共図書
館全てが、また「殆んどの著作物に対して、読書の困難な者」に対応するようになっ
たのである。今回訪れた館において、既にその動きが見られたことは評価に値する。
これに対して、高知の場合、「県立」を除いては、全く関心も示されていないに等
しい。この大きな落差に愕然とした次第である。点字図書館以外の全ての公共図書館
における障害者へのサービスでは、京都や大阪は勿論のこと、広島市立の多くの図書
館において、点字やテープの本が置かれ、対面音訳も実施されており、更に障害者へ
の対応も行われていた。
大阪市立中央図書館に置いては何人かのスタッフに混じって、重度の肢体障害者が
担当していた。
また多くの公共図書館での、有能な視覚障害者の活躍も目覚ましく、大阪府立図書
館の杉田さん、枚方市立中央図書館の服部さん、そして、京都府立中央図書館の仁科
さんがそれぞれ視覚障害者を中心に障害者全般のサービスの中心的な担い手として働
いていた。
次に、西日本で最も進んでいる大阪においては、日本ライトハウス、情報文化セン
ターを中心に障害者サービスのネットワークが作られ、サービスの推進が図られると
ともに、更に今後の戦略も練られていた。そういう点に置いても上の3人は中心人物
であった。
4 ゆいまーる交流会イン高知(報告 藤原 義朗)
視覚障害をもつ医療従事者の会(ゆいまーる)は、医師や理学療法士などで構成さ
れている。結成3年、秋の交流会を高知で開催。11月20日はゆいまーるの副代表
でもある佐藤正純氏による市民向けリハビリ講演会を行なった。参加者は、医療や福
祉関係者をはじめ障害当事者や家族など約120名。(詳細はスクラップコーナー参
照)
21日は、視覚障害者の音声パソコンの老舗「高知システム開発」で、今後のソフ
ト開発などについて懇談した。
11月25日付け 高知新聞より
事故で視覚失った元脳外科医 佐藤正純さんが講演 高知市
「自分で切り開くしかない」 リハビリ楽しみ社会復帰
脳外科医として活躍していた14年前、スキー場で転倒し、高次脳機能障害を負っ
た佐藤正純さん(52)=東京都大田区=がこのほど高知市内で講演(視覚障害をも
つ医療従事者の会「ゆいまーる」主催)。突然に背負った重い障害を受け入れ、懸命
のリハビリを通して医療福祉関係の専門学校などで教壇に立つようになった半生を、
県内の視覚障害者や医療関係者ら約120人に語り掛けた。その要旨を紹介する。(
徳澄裕子)
横浜市の病院で脳外科医をしていた1996年2月、医局の仲間たちと北海道で初
めてのスノーボードをしていて転倒し、頭を強く打った。数週間の昏睡(こんすい)
を経て意識を取り戻したが、自分の家族の人数も分からず、人の顔も、マネキン人形
の影のようにしか映らない。脳外科医として、頭を打って脳を損傷し、視覚を失った
ことを受け入れなきゃいけないとは分かっていた。
神奈川県のリハビリセンターに移ってからは、歩行訓練をしたり、大学時代、趣味
でやっていたピアノの伴奏をするようになった。楽しみながらリハビリができたが、
医師にはこれ以上良くならないと判断され、「家に帰って余生を」と言われた。まだ
38歳。紹介されて行ったリハビリ外来でも「これ以上何をお望みですか」と言われ
、挑戦状を突き付けられた気がしたが、後になってみればそれが良かった。「この先
は自分で切り開くしかない」と思えたからだ。
見えない分、テレビやラジオ、テープ図書などをどんどん聞き、キーを打つと音声
が出るパソコンで記録した。それをまた音声で聞き、読み直していくと物を覚えられ
ると分かった。メールやネットで、情報を確認できるようにもなった。
ただ、これを仕事につなげるためには自分で動き回ることも必要。自分で電車に乗
り、バスに乗っていかなくてはいけない。そのために、「○○の交差点で右へ曲がり
何メートル」などと、方向や道筋を一つ一つ言葉で表し、頭の中に地図をたたき込む
やり方を身に付けた。これで、趣味のバンドの練習や、いろんな場所に行けるように
なった。リハビリの幅を広げ、「昨日よりも、今日は進歩したな」と思ったら自分を
ほめた。
ある専門学校から講師の依頼があり、教壇に立ったのは、けがから6年。初めての
授業が終わって「ああ、生きてて良かった」「こんな人生もあっていいな」と。仕事
は最大のリハビリ。使命感があるし、必要性がある。無理だと思っていたことが、不
思議とできるようになった。
医学には、限界がある。どんなに頑張っても、助けられない患者さんをたくさん見
てきた。死んでも不思議じゃなかった私が助かったのは、神様が「生き残って、人の
役に立つことをしろ」と言っているのだと思う。与えられた仕事は困難でもやるしか
ない。
リハビリは、単なる機能訓練ではなくて、復権のための哲学。患者さんが、どうい
う哲学を持って、どういう社会復帰を望んでいるか。そのために何が必要かを考えな
いと、本当のリハビリにはならない。私は、リハビリを何でも自分の楽しいことに結
びつけた。それが今、障害を楽しみながら生きることにつながっている。
5 点字受験合格記念講演会のご案内
高知での点字試験が実現して3年。県、高知市職員採用試験で念願の初の合格者が
生まれました。これを記念し、次の課題でもある就労環境の整備について考える講演
会を2月6日(日)
14:00〜16:30、サンライズホテル高知にて開催します。視覚障害者として
それぞれ三井住友銀行、大阪市役所でお勤めの岡田太丞氏、岸本慶子氏をお招きし、
どのように人的サポートを利用されているのかを中心にお話をうかがう予定です。続
いて開かれます総会、祝賀会にもお気軽にご参加下さい。
6 スクラップブックより
11月20日付高知新聞より
視覚障害の男性 初合格 県職員採用試験
高知市の吉岡さん 3度目挑戦実る
体に障害のある人を対象にした県職員の採用試験で19日、視覚障害者として初め
て、高知市升形の吉岡邦広さん(32)が合格した。県はこれまで、視覚障害者を行
政職に採用することは見送っていたが、2年前、吉岡さんらが「県視覚障害者の就労
を促進する会」をつくって門戸を開くよう求め、同年秋の試験から点字受験が可能に
なっていた。吉岡さんは3度目の挑戦で念願を果たした。(広末智子)
5歳で左目が失明し、高知大学在学中に全盲に。2年の休学を経て復学し、盲導犬
とともに同大に通い続けた。05年の卒業後、大阪で一般企業への就職を目指して活
動していたが、「活字が読めないのでは仕事にならない」「災害時に安全を保証でき
ない」といった理由で、履歴書を送ることさえ許されないような門前払いを受け続け
た。
07年10月に帰高し、県内の視力障害者らと「――促進する会」の運動に尽力。
県庁や市役所に「民間の模範となり、障害のある人の能力を理解し、受験機会をつく
ってほしい」と訴えてきた。
08年3月に県議会が同会の請願を採択し、県は県職員の身体障害者枠の採用試験
に点字を導入。吉岡さんは点字の速読訓練を含めて猛勉強を重ね、毎年、試験を受け
続けた。県の採用試験問題の音声化、障害者差別の禁止を求める運動にも力を注いで
いる。
吉報をつかんだ吉岡さんは「(合格には)まだまだ時間がかかると思っていた。試
験勉強に協力してくれた点訳ボランティアの方をはじめ、お世話になった人たちのお
かげ。お礼が言いたい」と感無量の様子。
ワンルームマンションで盲導犬エルマーと暮らす日々。採用された後は「図書館で
の障害者サービスや、障害者の雇用促進などの仕事に携わりたい」と張り切っている
。
中初級などに77人
県人事委員会は19日、行政や看護師など10職種の県職員採用中級・初級試験の
最終合格者70人(うち女性43人)と、身体障害者を対象とした選考試験の合格者
7人を発表した。
中・初級試験の受験者数は前年度比138人増の合計446人。合格者数は定年前
の退職者数などから同24人増で、平均競争率は6.4倍(前年度6.7倍)だった
。身体障害者対象の試験には22人が受験。行政3人、学校事務4人が合格した。
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