高知県視覚障害者の就労を促進する会
ニューステキスト版 No19

2011年3月7日発行
 事務局長 片岡慈仲 高知市上町4−10−3(電話088−875−6452)
 編集担当 藤原義朗 高知市上本宮町239−38 
 URL http://k-sokushin.net/
発行 高知県視覚障害者の就労を促進する会

1.点字試験合格記念講演・祝賀会報告


片岡慈仲
 去る2月6日、午後2時からサンライズ・ホテルにおいて、連合の「雇用と就労・
自立支援カンパ基金」の助成を受けて、「点字試験合格記念講演会〜今後の職場環境
の整備に向けて〜」を、70名の参加で開催した。

 県立盲学校の永田氏の司会で、まず、吉岡会長が開会の挨拶の後、県の地域福祉副
部長・吉田様と高知市健康福祉部長・岡林様よりご祝辞を頂いた。

続いて、全視協や日本ライトハウスなどからの祝電披露の後、講演に移った。

 最初は大阪市子ども青年局で働く27歳の全盲女性。
 「就職した年は音声パソコンも無く、台車を押して荷物を運ぶなどの仕事もした。
2年目からパソコンとブレイルメモ(電子データとして点字を読み書きできる情報機
器)が入った。でも、それだけで、一人で仕事ができるわけではない、いかに必要な

助を受けられる人間関係を作るかが大事」と具体的に困ったことや工夫を話してくれ
たので、今後県庁で働く上で大変参考になった。

 次は三井住友銀行の国際部門で働く岡田太丞氏。
 「タイで勤務中、激務と事故が原因で失明。生活訓練を受けたり、自分で音声パソ
コンを習得し職場に復帰したが、なかなか仕事は与えられなかった。
 海外で勤務した経験とその時獲た友人から他国の情報を集め、それを必要とする社
員に配布し始めた。その情報は最初15名だったが現在、1500名が受け取っている。」

 と、自分しかできない必要とされる仕事を作り出していくことに寄って会社にとっ
てなくてはならない存在になることができることを示してくれた。

 講演会の後、総会が開かれた。

 活動報告、決算報告が承認され、次のような今後の活動方針が決定された。

 1. 点字試験への音声パソコンの併用
 2. 就労に向けての音声パソコン講習の継続と充実
 3. 職場環境の整備への研究と協力
 4. 点字試験の隣県への普及


 午後5時から45名の参加で山崎氏の司会で祝賀会が開かれた。

 高知女子大田中教授の開会挨拶、高知点字図書館初代館長・渡辺氏の乾杯で始まっ
た。

 ご多忙中にもかかわらず、西森県議、塚地県議、中根県議、高木市議、迫市議がご
参加くださり、それぞれから心温まるメッセージをいただいた。
 プロジェクターの調整に手間取ったが、就労を促進する会結成から吉岡会長合格に
至る30数枚の写真を町田さんの解説とともに披露した。

 2時間に余る祝賀会は正岡氏の力強い閉会の言葉でその幕を閉じた。

2.高知市採用試験合格 脇水哲郎さん



 このたび、高知市の職員として採用が内定いたしました、脇水哲郎と申します。
 前年、筑波大学付属特別支援学校の先生にお声がけ戴き、高知市の職員採用試験を
受験する機会を得て、無事内定を頂戴することが出来ました。
 高知市及び高知県では、近年点字での職員採用試験の受験が可能になったというこ
とで、図らずも高知市で初めて点字受験に挑戦させて頂き、このような形でご縁が出
来ましたことを心より感謝申し上げます。
 福祉行政における課題は奥深く、また数多くありますが、とりわけ視覚障害に関す
るそれは、いかに豊富な情報を供給出来るかにかかっております。活字ベースで流れ
る情報をいかに点訳、あるいは音訳によってアクセシブルなものにするかは言うに及
ばず、加速するデジタル化の流れに対応して、視覚障害者にも操作可能な各種情報端
末を活用することにより、より多くの情報を届けられるようにすることが一つの大き
な課題になるだろうと感じております。
 現段階では、まだどの部署に席を戴けるのかは未定です。ですが、上記のような問
題意識を胸に、高知市行政の一端を担えれば、これに勝る喜びはありません。
 皆様のご指導、ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

3.「図書館」への新しい波


      〜著作権法改正で「図書館」が生まれ変わる?〜
                        正岡光雄
    視覚障害者の新たな雇用も(後編)
 高知での今後の公共図書館における視覚障害者を含む障害者対応も、これらの先進
県を見習ってほしいものである。障害者サービスの内で「マルチメディアデイジー」
の活用も多くの図書館で進んでおり、先日12月24日の「検討委員会」において、
県立図書館所蔵のものを公開した。
 ※マルチメディアデイジーとは文字と音声の入ったディスクであり画面上の文字の
内で約10文字が黄色に反転する。そしてこの「反転」がコントロールされて好みの
スピードで移動し文字の大きさや色、あるいは濃さなども変化できるものである。文
字にハンディのあるディスレクシアの人や注意の集中が苦手な人、知的障害者の読書
に最適である。

 京都府立中央図書館に置いてはカセットテープ、CD、デイジーの音声各図書ととも
にマルチメディアデイジー図書を含めた専用の図書室を持っていた点も大変ユニーク
であり、かつ進歩的でもあると思えた。
 今後の障害者対応で、実施が予定されているものに「公衆送信」がある。これはや
はり、読書の困難なものに対し図書の一部または全てを電子メール等で送信する制度
である。これは今のところ未だ実施に移されていないが、著作権法の規定の改正で可
能になっている。
 今回見学した多くの図書館において大変羨ましかったのは、大きなスペースに恵ま
れていることであった。土地の値段の高いという大都会に置いて可能なことが高知で
出来ないはずがないという印象もぬぐえない。
 また弱視対応の「拡大読書器」も各階毎に数台ずつ設置されるなど、読書を助ける
機器も豊富に置かれていた。学力向上を目指す日本に置いて図書館の果たす役割の大
きさは言うに及ばないが、障害者が埒外(らちがい)に置かれていないことも嬉しく
思った。
 図書館は学力向上に留まらず、豊かな文化、芸術、更に優れた人格をも作り出すで
あろう。
 そういう意味でも図書館の役割は計り知れない。高知の明日の人材育成に置いても
他県に負けない素晴らしい図書館を作ってほしいという、認識を深めた私にとって極
めて有意義な図書館訪問の旅であった。

4.スクラップブックより


    2011年2月7日付け高知新聞(21面)
  視覚障害者 就労広げよう  銀行員ら実体験語る 高知市
 県と高知市の職員採用試験に昨秋、視覚障害者が相次いで合格したことを記念する
講演会が6日、高知市内で開かれ、県外から招かれた2人の視覚障害者が、職場でど
んな壁にぶつかり、どう乗り越えていっているかについて体験を語った。  (山崎
倫裕)
 「県視覚障害者の就労を促進する会」が主催。県内では2008年から県職員、09
年から高知市職員の採用試験に点字が導入され、昨秋、それぞれ初めて視覚障害者が
合格した。2人は今春から各職場に配属される。
 講演会の講師に招かれたのは、大手都市銀行で働く岡田太丞(たいすけ)さん(45
)=兵庫県西宮市=と大阪市職員の女性(27)。
 岡田さんは03年、タイのバンコク支店に駐在中、脳腫瘍が判明。さらに交通事故に
も遭って左目を失明、右目も視野が狭まり、ほとんど見えなくなった。
 治療のため帰国した後、復職したい一念で歩行訓練や音声パソコンの技能習得に努
力。08年、大阪本店の勤務になり、銀行側は書類を読んだりするための専属のアシス
タントを岡田さんに付けた。
 それでも本格的に取り組める仕事はなかったが、海外支店の経験を生かし、現地の
日本企業の情報を集約するシステムを自身で構築したという。
 「目が見えていた時の私は営業でもばりばり成績を上げる、サッカーで例えるとフ
ォワードだったが、今思うと嫌な奴だった。しかし、見えなくなり、どうしたらフィ
ールドに戻れるか必死で考えた。今はどんな小さいことでも心からありがとうと言え
る。今の自分の方が好きです」などと話した。
 また、大阪市職員の女性は先天性の全盲。08年に同市こども青少年局に配属された
が、当初は職場に音声パソコンがなく、苦労した経験を語った。
 2人は、職場の同僚や上司らに「何が出来て何が出来ないか」を理解してもらうこ
とが重要だと話、「相談に乗ってくれる人を見つけて」「あいさつは大きな声で」な
どと視覚障害者ら約50人の参加者にアドバイス。参加者は一言一言にうなずき、「大
変、勇気づけられた」と話していた。
 「ー就労を促進する会」は「県と高知市で合格者が出たことで、会の活動も新しい
段階に入った。視覚障害に限らず、障害がありながら健常者の中で働くことにはまだ
多くの問題があるが、生き生きと仕事をするために何が必要かを考え、行政にも働き
掛けていきたい」としている。

他に2月7日付毎日新聞高知版、2月13日付高知民法にも記念講演会の記事が掲載
されています。



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