高知県視覚障害者の就労を促進する会
働く視覚障害者インタビュー

2010年11月7日更新

目次(文書内リンク)
インタビュー1 桂田恵子さん
インタビュー2 岡崎学さん
インタビュー3 川上正信さん
インタビュー4 岸本慶子さん
インタビュー5 仁科豪士さん
インタビュー6 福永智洋さん
インタビュー7 佐々木康裕さん
インタビュー8 田中章治さん
インタビュー9 高山良太さん
インタビュー10 小山田みきさん
インタビュー11 松井進さん
インタビュー12 中村忠能さん
インタビュー13 金子聡さん
インタビュー14 藤田善久さん

*ニュース5より
働く視覚障害者インタビュー1


聞き手 正岡光雄
 最近「国の就労支援」の積極策もあって、「障害者の雇用率」はアップしています
。その中で、全盲の公務員の存在が注目されています。そこで、今回神戸市にお住ま
いで明石市役所にお勤めの桂田恵子さん(全盲)にいろいろお話をお聞きしました。
 桂田さんは、岡山県立盲学校卒業後、お友達に啓発され電話交換士を目指しました

大阪にあるライトハウスで訓練を受けましたが、運良く終了前に明石市役所への採用
が決まりました。そして昨年より、今の「子育て支援」担当となりました。
【問】市役所へお勤めを希望された契機は?
【答】盲学校卒業者の大半の人が針灸やマッサージの仕事についていますが、不安定
だし、たまたま友達が電話交換士を目指していましたので、挑戦してみました。
 ライトハウスの職業訓練コースには事務系もありましたが、当時はまだ視覚障害者
におけるパソコン関係の仕事も少なかったので、選択しました。職場には同じように
電話交換士の視力障害の仲間が4人もいて楽しく働きました。
【問】昨年より、「子育て支援」の方に変わられたのは希望されたのですか?
【答】一昨年より技能労務士の方を対象に「他の職種への変更試験」が開始され、希
望者は受験できることになりました。人事課の方に相談してみましたところ、「今の
まま仕事をしてもらっていっこうに差し支えないとも言われましたけれども、私とし
ては新たなチャレンジの機会と応募しました。その際、希望の職種の欄がありました
ので、幾つか書きましたところ、その内の一つが叶いました。
【問】現在、具体的にどのようなお仕事の内容ですか?
【答】幾つかありますが一番多いのが、テープ起こしといって、会議や講演を録音し
たものを、パソコンに打ち出し文字化する仕事です。最近では「虐待問題」に関する
会議や講演も増えています。だいいち、自分自身も6歳の息子の子育て中なので、関
心もあります。
 その次に多いのが、視覚障害関係団体の話し合いで、参加者に配布する点字資料作
成の仕事です。この場合にはゴミ問題やリサイクルに関する会議がありました。
そして、三つ目には課内での行事等のスケジュールのデータの作成です。パソコンの
仕事は結構多くなります。
【問】通勤のことをお聞きしたいのですが?
【答】ずっと神戸に住んでおり、明石までは電車で約30分かかります。
【問】6歳のお子さんがいらっしゃるそうですが、ご家族のことをお聞きしても宜し
いでしょうか?
【答】主人はやはり全盲で、大阪府庁に勤めて電話交換士をしております。大阪や神
戸の官庁には今も数人ずつの交換士が働いております。そして、6歳の息子がおりま
す。
【問】周りの人たちとのお付き合い等で、何かお困りのことはありませんか?
【答】職場の方はとてもやさしく、普通字の回覧など丁寧に教えてくださいますし、
和気藹々の状態です。また、近所の人たちとも仲良くやっています。マンションの宅
配ボックスがタッチパネル式で困りましたが、お願いしたらお隣の方が手助けしてく
ださいます。
【問】ホームヘルパーは利用されていますか?
【答】手紙や回覧等ありますので2週間に1度くらいの割合でお願いしています。そ
れから、子どもの送迎は時々ファミリーサポート制度を活用しております。
 ショッピングはスーパーでもよくサポートしてくれますので、自分で直接お店に出
掛けます。ショッピングも結構楽しみです。
【問】最後にお子さんへの将来についての期待はいかがですか?
【答】とにかく丈夫で元気はつらつに育って欲しいと思っております。
【問】どうもありがとうございました。ご活躍をお祈りしております。
 何時もニコニコしていて、しかもハキハキとお答えくださる桂田さんに大変好感を
持ちました。

*ニュース6より
働く視覚障害者インタビュー2


聞き手 藤原義朗
 今回は視覚障害者の公務員採用では最も実績が多いといわれる神奈川県の岡崎学さん
(全盲)にインタビューしてみました。
 
 岡崎さんは大学の教育学部をを卒業され、1982年に神奈川県のかつての中級試
験に点字受験で合格されました。神奈川県では電話交換手以外での一般採用としては
第1号で、勤続26年になるベテランです。
問 あんまはり灸の視覚は持っておられますか。
答 持っていません。他の仕事に就きたくて大学に挑戦しました。
今は神奈川県庁の健康増進課で煙草と健康について、そのチラシの作成や講習会の設
定、市町村からの相談や指導など行なっています。
問 どんな機械設備を使用しておられますか。
答 パソコンの音声変換装置や点字をピンで浮き出させるピンディスプレイを使って
います。パソコン音声はヘッドホンを使って聴いています。県庁では、職員に各1台
パソコンが配置されており、イントラネットといって庁内の情報も取り入れることが
できます。
問 人的サポートは?
答 ワークアシスタントといって、職場介助者を配置していただいています。普通字
文書を読んでもらったり、パソコンでは音声になりにくいもの、そして書き込みなど
手伝ってもらっています。
問 職場の部署変換など大変じゃなかったんですか。
答 今の職場で6箇所目です。公務員の宿命ですからね。
企業に対して仕事をどんどんしますよ、という姿勢が大事じゃないですかね。と共に
、この仕事なら私にできます、とかこういう仕方したらできます、というようにアピ
ールしていくことも大切じゃないでしょうか。時間をかければできるということと、
仕事として成立することとは別。このあたりを見定めていくことが重要です。
★さすが草分けならではの後進に期待するお話でした。

*ニュース7より
働く視覚障害者インタビュー3


聞き手 藤原義朗
 今回は、横浜市中央図書館で働いておられる川上正信さんに、東京高田の馬場の喫茶
店でお会いしお話を伺いました。川上さんは、1952年生まれで現在は全盲、ご家
族は奥様と3人の子どもさんがおられます。

Q 点字受験はどのように始まったんですか。
A 神奈川県の視覚障害者の雇用を進める会や全日本視力障害者協議会の運動で、「
点字受験を求める」請願運動が起きました。その頃は、のちに社会党の委員長になら
れた飛鳥田さんが横浜市長をされていたんです。飛鳥田さんご自身も足に障害がある
方なんですね。市長さんからも「パイオニアとして頑張って」と、お言葉を頂き、労
働組合のバックアップもあり畳み掛けの行動で一般就労に際しての点字受験が始まり
ました。
Q 1種2種ありますが。
A 大学は福祉学科でした。上級試験福祉職でしたね。入ったのは当時できたばかり
の図書館で、それ以降ずっと図書館関係で仕事をしています。その後、横浜市の障害
者雇用率は4パーセントに上げましたね。
Q 具体的に仕事内容を教えてください。
A 録音点字の本の貸し出し、来館困難な障害のある人への郵送貸し出し、録音図書
を作る音訳者の確保、新着図書案内音訳者の養成研修、デージー図書というカセット
がなくなった後の新たなデジタル録音環境を身につける為の業務など行っています。
Q 視覚障害者を雇うことによって、新たに始まったことはありますか。
A 私が入ったときは、何もない。一から始めたんですよ。在宅での視覚障害のある
人に対してプライベートサービス、いわゆる委託音訳など、いろいろ障害者サービス
を提案もしてきました。最初は理解されずに苦労もしましたよ。しかし、市民からの
提案なども後押しして進んできました。また、図書館協力者の人たちとの仲立ちもし
ています。
Q 視覚障害者の就労のポイントはなんだと思いますか。
A 仕事ができることといったら能力と意欲、サポート体制、パソコンなど機器類の
保障じゃあないでしょうか。
 
さすが草分けの人ならではのお話しでした。特に、視覚障害者を雇うことによって新
たな障害者へのサービスが広がり、無縁だった図書館がぐっと近くなった話が印象に
残りました。
川上さんは、なごや会という公共図書館で働く視覚障害者職員の会の会長をされてい
ます。川上さんから、視覚障害者の情報保障へのほとばしる情熱を感じました。ぜひ
、高知にお招きしてお話を聴かせていただきたい方だと思いました。

*ニュース7より
働く視覚障害者インタビュー4


聞き手 吉岡邦廣
 今回は、大阪市こども青少年局でお勤めの岸本慶子さんに電話取材させていただき
ました。岸本さんは先天性の全盲の方で、今年採用となられたばかりの方です。

問: 岸本さんが受けられた試験の試験場所や時間等についてお聞かせ
下さい。
答: 他の4人の視覚障害の方と一緒に、別室受験しました。試験時間は通常試験の
1.5倍で、教養試験が3時間、論文・専門試験が3.5時間でした。
問: 通常試験の1.5倍というのは長くありませんでしたか。
答: 私にはちょうどいい時間の長さでした。教養試験はぎりぎり間に合わせました
が、論文・専門試験はそれなりの余裕を持って受験することができました。
問: 他にどのような障害の方が受験されていましたか。
答: 4人が一緒に面接試験を受けたのですが、私を含めて視覚障害者が2人、後は
手話通訳者を連れられた聴覚障害の方と介助犬をつれられた方がいました。
問: 今年から大阪府で認められることになりましたが、音声パソコンでの受験はど
うわれますか。
答: 点字の読み書きがあまり速くないために受験できなかった人たちが受験できる
ようになるので、よいことだと思います。
問: 具体的にどのようなお仕事をされていますか。
答: まだ自分専用のパソコンを準備してもらえていないので、今は発送作業の手伝
いをしたり、会議の準備や後片付けなどの雑用をしています。
問: 職場でのサポートは何かしてもらっていますか。
答: アルバイトの職員に、私のサポートもしてもらってい   ます。しかし、直
接私にではなく、周囲の職員がアルバイトの人ごしに仕事を頼むことがあり困ってい
ます。
問: 最後に岸本さんがこれからやってみたいことをお聞かせください。  
答: 相談等で視覚障害者のリハビリに関わる仕事がしたいです。あとは、障害児の
放課後や休日等の学校以外の時間の充実の手伝いをする仕事がしたいです。
問: ありがとうございました。

*ニュース8より
働く視覚障害者インタビュー5


聞き手 吉岡邦広
 今回は、京都府立図書館にお勤めの仁科豪士さんにお話を伺いました。仁科さんは
京都府で初めて点字試験が実施された1990年に合格されました。17年間京都府で働か
れているベテランの職員さんです。
問:府立図書館でどのようなお仕事をされていますか。
答:大まかに言えば、3点あります。一つは対面朗読を希望される方とボランティア
の方との間での調整の仕事です。後は図書館が購入したデイジー図書等のお知らせ文
書の作成やホームページの管理です。
問:府立図書館の前は、どのような部署でお仕事をされていましたか。
答:まず、2週間の新採研修の後、7ヶ月間ほど所沢の国立身体障害者リハビリテー
ションセンターでAOK(音声ワープロ)やVDM(パソコン画面読み上げソフト)
等の操作の研修を受けました。その後京都府に戻り、総務調整課文書係で勤めました
。ここでは、視覚障害者の方から提出のあった点字の議会請願書や申請書等をを普通
字に直したり、逆に視覚障害者の方へのお知らせの文書を点訳する仕事をしました。
会議の日取りの調整、提出資料の準備、案内文を出すといった細々した仕事もやりま
した。
 総務調整課の後は、中小企業総合センターの経営課調査係に人事異動しました。主
に中小企業を対象に無料相談会を実施し、必要があればコンサルタントを紹介するの
が仕事でした。あと、セミナーを企画し、報告書を残すという仕事もやっていました

問:サポート体制はありますか。
答:僕は職場介助者をつけてもらっています。普通字の読み書きのサポート等をして
もらっています。中小企業支援センターで働いているときは、調査のために業界の方
に話を聞きに行く際のサポートもしてもらいました。
問:機器はどのようなものを使用されていますか。
答:スクリーンリーダーやピンディスプレイ(パソコン画面を点字表示する機器)、
点字プリンター等を揃えています。出張申請や休暇願いを入力するための独自開発ソ
フトを使うときは、JAWS(就労支援に特化したスクリーンリーダー)を使用して
います。
問:視覚障害者が働く上で、どのようなことがポイントになると思いますか。
答:ハードウェアと人的なソフトウェアの充実です。それから、視覚障害者のご本人
と職場とで「どのような仕事ができるか」を考えていくことが大事だと思います。
問:どうもありがとうございました。
 今回1時間を超える電話取材に応じてくださった仁科さんは、ベテランとしての経
験がにじみ出る大変落ち着いた方でした。

*ニュース8より
働く視覚障害者インタビュー6


聞き手 藤原義朗
 今まで、一般職や図書館などで働く公務員の方々にインタビューしてきましたが、
今回はパソコンをフル活用して民間企業で働いておられる福永智洋さんに大阪藤井寺
市の喫茶店でお会いしました。
Q 年齢とご家族、視力は?
A 43歳で、家族は視覚障害である妻と子どもが2人です。強度の弱視で視覚障害
2級です。熊本の盲学校卒業で日本福祉大学の社会福祉学科を卒業し、日本ライトハ
ウスの職業訓練など経てきました。
Q現在はどんなお仕事ですか?
A 京セラ三田という複写機やスキャナー、ファックスプリンターなど情報処理機器
製造業の品質保証という仕事をしています。
品質保証といってもメンテナンスなどのサービスは販売会社がするので、その人たち
へ情報を提供したり、上がってくる情報の仕分けなどを行なっています。つまり、販
売会社と協力して顧客満足度を上げていく仕事です。
Q パソコンをどのようにして使っていますか?
A 一人に一台パソコンがあり、ジョーズとい文字情報やグラフィックの
アイコンなども読みあげる画面読み上げソフト、ズームテキストといって画面を大き
く拡大するソフトを使って仕事をしています。
 厚生労働省の設備設置等助成金という3分の1の補助をしていただける制度を利用
してもらいました。イントラネットで社内報も読むことができます。
Q 雇用率は達成していますか?
A 率は知りませんが、私が応募したときは会社の再建中で障害者を雇用しなければ
ならないという社会的立場にあったときだと思います。
Qやはり、障害者雇用の機運を高める運動が必要ですね。最後に、企業で働く上での
スタンスは?
A 仕事は何でもやりますよという姿勢が大切ではないでしょうか。そして、できな
いことも言っておくことが必要です。以前、製品のユニバーサルデザインのプロジェ
クトがあったとき、関わらせていただいたんですが、チャンスを逃さないようにする
ことが大切ではないですかね。

 福永さんと話をして、パソコンが大切なツールであることと働く姿勢について学ば
させていただきました。

*ニュース9より
働く視覚障害者インタビュー7


聞き手吉岡邦広

 千葉県県庁の総合企画部広報報道課にお勤めの佐々木康裕さんに職場でお話をうか
がってきました。佐々木さんは全盲の視覚障害の方で、10年間同課で働かれています


問:佐々木さんは点字受験されたのですか。

答:はい。盲学校卒業後に進学した麗澤大学4回生のときに、障害者枠で受験しまし
た。問:今までどのようなお仕事をされてきましたか。

答:採用後6年間は、電話で県民の皆さんのご意見やご質問をうかがう広聴という仕
事をしました。今は、県庁内に配布する広報広聴マニュアルの作成、更新の主担当を
任されています。あと、県庁内には広報広聴推進委員会という委員会があり、この委
員会の事務も行っていますね。日常的には、いかにマスコミ報道されたかをチェック
してデータベース作りをしています。

問:点字文書作成の仕事はされていないのですか。

答:長期保存文書や行政資料の保存を業務とする文書間という部署があり、そこにも
視覚障害の職員が勤めています。点字文書の作成は、主にその方がされているようで
す。

問:今後はどのようなお仕事をされたいですか。

答:視覚障害の方に情報をお伝えする仕事に取り組みたいです。具体的には音声化ソ
フトを使用してホームページを閲覧する方にとっても、分かりやすいホームページを
作る仕事生活に必要な情報などをいかに普通字のお知らせとタイムラグなく点字化す
るかといったことに取り組みたいです。

問:視覚障害者が働く上で何が必要だと考えていらっしゃいますか。

答:文書事務をするためにはパソコンの技術が必要です。あと、表記方法や文書のレ
イアウト等の、パソコンで普通字の読み書きをするための知識も必要だと思います。

問:どうもありがとうございました。

 佐々木さんは実直な方で、「周囲の人たちも仕事ぶりを評価している」と副課長さ
んもおっしゃっていました。今後ますますご活躍されることを期待します。

*ニュース9より
働く視覚障害者インタビュー8


聞き手井上奈美子

 東京都都立中央図書館にお勤めの田中章治さんにお話をうかがってきました。

 大学卒業後、田中さんは、約2年間函館の視覚障害センターで理療科の教官をなさ
っていらっしゃいました。しかし、一般就労への想いの強い田中さんや大学の恩師、
日本盲大学生会の働きかけで東京都は、福祉専門職の採用試験において点字試験を実
施することを決めました。1973年に初めて行われた点字試験で採用となり、定年まで
中央図書館でお勤めになられましたが、今も田中さんは、週4日勤務されています。

問:通勤はどうされていますか。

答:僕は今、埼玉県に住んでいます。東京には、地下鉄で片道1時間かけて盲導犬と
一緒に通勤しています。

問:若いころのご苦労をお聞かせください。

答:なんでも質問したり、忙しいときに質問していては一緒に働く職員に嫌がられる
ので、人間関係に気を配りました。ただ、職場で任される2,3の仕事だけするとい
うことではいけないので、自分はこういった仕事ができるということは積極的に提案
しました。

問:どのようなお仕事をされていますか。

答:大まかに言えば、5つあります。1つは、読む本の分野に合わせて最適な音訳者
を手配する等の音訳者と対面朗読希望者との間での調整です。2つ目は音訳者の選考
とオリエンテーションの実施、3つ目は出来上がった録音図書と点字図書のチェック
です。4つ目は音訳、点訳上のアドバイスです。専門書の図表等の音訳、点訳は視覚
障害者でなければ適切なアドバイスができないので、これは重要な仕事です。5つ目
は、出来上がった点字図書や録音図書にラベルを貼ったりする仕事です。

 あと、区立、市立図書館の対面朗読サービスに対するアドバイスも大切な仕事です
。日常的には中学生や高校生の職場実習の指導、電話応対などもしています。


視覚障害者の一般就労の先駆者である田中さんは穏やかで、優しげな方です。ご自身
のできる仕事を積極的に提案しながらも、ともに働く人への気配りを大切にされてい
ることを強く感じました。

*ニュース10より
働く視覚障害者インタビュー9


聞き手 吉岡邦廣

 今回は日本福祉大学を卒業後、東京都福祉保健局ナーシングホームでお勤めの高山
良太さんに電話取材させてもらいました。在学中に社会福祉士の資格を取得した高山
さんは、東京都の福祉士採用試験に合格し、2002年度からお勤めになられていま
す。高山さんは全盲の方ですが、片道1時間をかけて毎日通勤されています。
問:採用試験はライバルが多かったのではないですか。
答:福祉士の採用試験は点字試験だけで、視覚障害者が対象の試験です。また、受験
には福祉関係の資格が必要なので、受験人数は限られていました。
問:どのようなお仕事をされていますか。
答:僕が働いている所は特養の老人ホームなのですが、ここで入所されている方の生
活相談をしています。あと、都民の方からの介護保健についての質問に電話や窓口で
応じています。
問:お仕事で困られていることはありませんか。
答:手書きの書類が困ります。できるだけパソコンのデータで渡してもらえるように
お願いしています。
問:職場でサポートしてくださる人はいないのですか。
答:毎週火曜日に3時間のヒューマンアシスタントをつけてもらっています。この時
に書類を読んでもらっています。
後はリーディングサービス(対面朗読)も利用しているのですが、仕事柄個人情報が
多いので、とても気を使っています。書類はコピーして、個人情報に触れる部分を塗
りつぶしてもらった上で、対面朗読してもらう等の工夫をしています。
問:電話相談や窓口相談の仕事はご苦労が多いのではありませんか。
答:電話相談は相談後に相談記録をつけるのですが、ブレイルメモ(点字電子手帳)
でメモを取ることができるので、それほどではありません。ですが、窓口相談では入
所申請書等の書類も扱うので、他の職員に確認してもらったり、なるべく提出しても
らった書類を使って説明するなどの工夫をしています。あと、何も話さずに待ってい
らっしゃる方もいるので、窓口当番は気を使います。無人の窓口に話しかけてしまっ
たりすることもあります。
問:どうもありがとうございました。

*ニュース11より
働く視覚障害者インタビュー10


聞き手 吉岡 邦廣

 今回は、8年間天王寺夕陽丘保育園で、保育士として働かれている小山田みきさん
にお話をうかがいました。小山田さんは大分県の盲学校のご出身で、京都の短大で保
育士の資格を取得されています。

問:保育士のお仕事を見つけるまで、たいへんだったのではありませんか。
答:求人に応募した保育園には、ボランティアをさせてもらえるようにお願いしまし
た。そして実際を見てもらって、やっと面接にこぎつけるという感じでしたね。
問:どのようなお仕事をされていますか。
答:保育園で体験したことを思い出してみてください。脱尿の後始末をしたり、食事
の準備や後片付けをしたり。同じ部屋に他に2人先生がいますが、どうしようもない
とき以外は、特別に補助の先生がついているというわけではありません。
問:子供たちに絵本の読み聞かせをしてあげたり、ピアノの伴奏をしてあげたりもし
ますか。
答:します。絵本を読むときは、点字を子供が読んでいるページと反対のページに貼
るなどして、点字を読む手で絵本が見えなくならないように工夫しています。幸いピ
アノも弾けます。でも、絵本を読んだり、ピアノを伴奏したりするのは保育の一部で
す。
問:事務的なお仕事はどうですか。
答:連絡帳だけは読み書きをしてもらっていますが、それ以外の事務的な仕事は音声
パソコンでやっています。
問:職場の人付き合いで留意されていることはありますか。
答:転んで泣いている子の後ろで、別の子が脱尿する。とてもじゃないですけど、ゆ
っくり話をする暇なんて無いんです。どんなにがんばっても、私達は健常者より一つ
のことに時間がかかってしまうので、せめて間違いの無いよう丁寧にやって、迷惑を
かけないようにしています。
 
8年間、子供たちの安全に神経を尖らせながら、小さな戦場のような職場で働いてこ
られた小山田さんは、活き活きとした、力強い方でした。

*ニュース13より
働く視覚障害者インタビュー11


講演・懇親会編 (報告 吉岡 邦廣)
 今回は5月10日に高知市市民図書館で開かれたバリアフリー出版についての講演のために来高された松井進さんにお話をうかがいました。松井さんは千葉県で初めて点字の公務員試験で一般行政職として採用された方で、現在は千葉県立中央図書館で障害者サービス担当のお仕事をされています。バリアフリー出版以外にも、盲導犬についての著書を執筆されるなど、多方面でご活躍中の方です。講演会とその後の懇親会で貴重なお話をして下さいました。
 まず、講演会では千葉県庁で働いている視覚障害者の仕事、職場でご自身の仕事を築いてきた体験をお話してくださいました。
 現在千葉県では、県税事務所、保健所をはじめいくつもの職場で視覚障害者が働いているそうです。役所には起案書作成の仕事がたくさんあり、PCの音声化ソフトが進歩している昨今では視覚障害者がやれる仕事はたくさんあるはずと松井さんはおっしゃいます。
 しかし、松井さんご自身も入庁投書は自分の仕事を一から築くのにたいへんご苦労をされました。コピー用紙やボールペン等の消耗品の管理といった小さな仕事から始め、少しずつ自分の仕事を増やしてきたそうです。その甲斐あって、「今は仕事が終わらないということはあっても、仕事がないということはあり得ませんが」と苦笑されていました。
 講演後の懇親会では仕事をしていく上で重要なこと、就労、採用試験上の課題が参加者から質問されました。
 松井さんは人脈作りを、仕事をしていく上で心がけていらっしゃるそうです。この人がいなければ仕事が進まない、そうなることが理想だそうです。日本点字図書館、盲人情報文化センターと高知システム開発を仲介して、マイブック(視覚障害者用読書ソフト)の開発に一役買うなど仕事以外でも人脈が役立っているようです。
 就労、試験上の課題として松井さんが挙げるのが、学歴です。視覚障害者も修士、博士の学歴を収める必要がありますが、文献等の情報入手の困難さから大学院で学ぶのは容易ではありません。「働きながら私も勉強したいのですが、時間的に難しいですね」と残念そうでした。
 松井さんは頭の回転の速い、明るい方でした。視覚障害者雇用の先進地、千葉ならではのお話をたくさんうかがうことができましたが、「視覚障害者にやってもらえる仕事が見つからないのは当たり前。仕事はつくっていかなければならない」と繰り返されていたのが印象的でした。障害者雇用の基本は、その人にあわせた仕事をつくることにあるのだと再確認しました。盲導犬とともに今後一層ご活躍されることを期待します。

*ニュース15より
働く視覚障害者インタビュー12


聞き手 藤原 義朗
 中村さん パソコン力以外にスキル必要
 今回は、福岡県北九州市の民間企業で働く中村忠能(ただやす)さんにインタビ
ューをしてきました。
 中村さんは(有)化成フロンティアサービスという三菱化学の特例子会社に勤め
る32歳の青年です。佐賀盲学校出身のほぼ全盲の方です。筑波身障技術短大情報
処理科を卒業し就職されました。

中村 特例子会社は、そこの障害者雇用率が親会社全体の雇用率計算になるわけで
す。三菱化学全体としては雇用率達成しているということです。会社は、ペットボ
トルや車の部品など化成製造の会社です。
藤原 仕事内容は?
中村 会社のホームページを見える人と組んで作ったり、社員の点字名刺作りや、
その他、点字プリンターを使用して会社案内などもしています。
藤原 ホームページ作成で、視覚障害者としてのメリットは?
中村 最近のホームページ作成は、以前より簡素化されて視覚障害者に作りやすく
なりました。また、視覚障害者がアクセスしやすいよう当事者の観点から配慮して
作成しています。使用ソフトは、WZエディターという読み分けできるもの、ジョ
ーズ、PCトーカーです。見える人と一緒に仕事をしていると、ソフトの関係でた
まに困ることがありますね。ですけど、見える人に見てもらいながらという方法は
ありますね。
藤原 厚生労働省制度の設備設置助成金事業は利用しましたか?
中村 初年度は、ソフトを買ってもらいました。その後のバージョンアップへの対
応を切り出せるかどうかは企業への貢献度によるものですかね。
中村 筑波技術短大では、雇用制度や技術以外のノウハウについても教育上必要だ
と思いました。また、先天盲の人にも漢字教育が必要です。日商のワープロ検定な
ど設けて技術アップも必要でしょう。それと、ストレスを溜めないことでしょう。
目にきますからね。テープ起こし、デジタルデータは足でのアシストではなく、「
おこしやす」といって裏キー操作でできるものを使用しています。

 今回、中村さんにインタビューさせていただいて、個人の努力と企業のコーディ
ネートの大切さを感じた取材でした。

*ニュース16より
働く視覚障害者インタビュー13


取材 藤原 義朗
金子聡さん、大切なのは「告白力」
 1月の終わり、東京湯島の喫茶店で会い、お話を伺いました。43歳、手帳は1種 2級の方です。網膜色素変性症で視野障害があるため白杖歩行をされています。
 
金子 食品会社で物流のマネジメントをしています。つまり商品がちゃんとそろっているかチェックし、販売チャンスロスを無くす仕事です。エクセルで関数を入れて、ジョーズ、エックスピーリーダーを使用しています。視覚障害者は電話が使えるということで、今の仕事が出来ています。社内でプレゼンもします。
金子 成果をきちんと出さないといけない会社です。200人いますが、3ヶ月で辞める人もいます。社長がフランス人になり、障害者を雇用しなければならないということで雇用につながったわけです。職場で視覚障害者が働くということは、その職場によって求められるものも違うし、視力の程度も個人差があることなので、こうでなければならない、というものは必要がないと僕は思います。むしろ、視覚障害者が抱えている最大の問題は、眼が見えない、見えづらいことではなく、職場においては「コミュニケーションが取りづらい」ことだと思います。自分が何が出来て、何が苦手で、どんな風に見えて、どんな風に見えづらくて、何を手伝ってもらいたくて、どこまでを自分でトライしてみたくて、等々の、伝えにくい部分をどう「告白」することができるのか、また、それを受け止めてくれる環境をどこまで作れるのか、というのが、最も大切な部分だと思うのです。
 厚生労働省の制度で雇用のために職場の近くに住居保障援助する施策があります。これもプレゼンしました。
藤原 ロービジョン訓練のサークルをされてると聴きましたが。
金子 訓練は毎月するんですが、ロービジョンセルフトレーニングはまず、弱視の人たちの見え方のトレーニングをして、拡大読書器や歩行のトレーニング、パソコンやPTP1など練習していくサークルです。自分のしたいことを最大限発揮するための取り組みが必要なんじゃないかな。

*ニュース17より
働く視覚障害者インタビュー14


急がず、焦らず、怠らず  熊谷組の藤田善久さん
 8月の終わり、福岡ヤフードームの喫茶店でお話しを伺いました。藤田さんは最初の子どもさんができた時会社が倒産。次の会社で次男が生まれ、31歳の時仕事中に事故で失明。修羅場を通ってきた36歳の方です。現在NPO法人タートルの理事もされています。藤田さんのリハビリのことは朝日新聞に掲載されていますので、スクラップコーナーを参照してください。
Q どんな会社ですか。
A 熊谷組は大手建設会社でダムやトンネル、超高層ビルなど日本をはじめ、世界中で活躍している会社です。31歳の時鉄パイプが頭に落ちてきて脳挫傷、頭蓋骨骨折、両眼眼球破裂を受けました。
Q 会社に視覚障害者の先輩はおいでましたか。
A かつては女性でおいでたみたいです。人事課の人と東京まで行き、視覚障害者が働いている会社をいくつか見学にいきました。そこで就労中における視覚障害者のパソコン業務を初めて見ました。人事部の人に、障害者の就労を理解していただくには最良の方法だと思いました。
Q リハビリまでどのくらいかかりましたか。
A 被災してから2ヶ月後、転院先の柳川リハビリテーション病院の高橋先生にお会いできたことが大きかったです。眼科医、訓練施設、労働関連、企業の連携がなければ復職就労はありえないと思います。
Q 仕事の内容は。
A 契約業務を電子システム上でおこなう電子商取引というものを主にやっています。画面音声化ソフトはJAWSを使っており、契約件数の取りまとめ、測量機の発注など行なっています。
Q 仕事の理念としていることを教えてください
A 急がず、焦らず、怠らずの3つです。それから、業務に対していろんなやり方があり、できる可能性があると思いますので、個人や会社の中で悩まずに、情報収集をおこなうようにしています。また、可能性を見つけるべく、個人と会社にとって視覚障害者の就労状況を見学することは必須だと感じています。

NPO法人 タートル
 視覚障害者が視力低下によって就労が難しくなりはじめたとき、同じ体験をした者が継続就労について親身になって相談を受けて支援します。また、眼科医、訓練施設、労使団体、行政など関係機関と連携して視覚障害者が安心して働ける環境作りを目指しています。



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